研究内容

一般の方に,少しでも本研究室の研究内容をご理解いただけるよう配慮して作成いたしました. 正確性を欠く部分もあるかと思いますので,予め,ご了承願います. 専門家向けの内容は,論文誌や国際会議論文で情報発信しておりますので, Publicationsをご覧下さい.







A. 最適化と信号・データに基づく解析技術


 1. AIと最適化の融合:AIアシスト型最適化戦略
[詳細ページへのリンク]

 2. ネットワーク上の最適化:分散型アルゴリズム

 3. 外れ値にロバストな信号復元法:Moreau包に基づく正則化関数の機能強化
[詳細ページへのリンク]





B. オンラインアルゴリズムと適応性


 4. 非線形関数のオンライン学習法:多カーネル適応フィルタと無線通信システムへの応用
[詳細ページへのリンク1: 多カーネル適応フィルタ]
[詳細ページへのリンク2: 無線通信システムへの応用]

 5. 高性能適応アルゴリズム



- 3年生 湯川研の研究に興味がある人は、メールください(2026年度採用情報)。
- Ph.D.を取得したい方 湯川まで問い合わせください。
- 企業の方 学術指導、共同研究、技術コンサルティング等のご相談は、直接、湯川(yukawa[at]elec.keio.ac.jp)までご連絡ください。



1. AIと最適化の融合:AIアシスト型最適化戦略


概要
最適化アルゴリズムの一部にAI(ニューラルネットワーク)を組み込んだAIアシスト型最適化戦略を研究しています。AIと最適化を組み合わせるアプローチは、世界中で盛んに研究されています。AIは、従来の手法と比べて性能を大幅に向上させられることが報告されている一方で、解釈性の点がネックとなり、産業化の拡大に歯止めがかかっています。本研究室では、AIの間違いの原因を特定し、間違い防止につなげていくことを目指して、大域的最適性を保証したAI・最適化一体型アプローチを研究しています。 詳細 (link)







応用分野
画像、音響、データ解析(文書分類)、他多数

研究プロジェクト
 1. 単調リプシッツ連続勾配に基づくAIアシスト型最適化戦略
M. Yukawa and I. Yamada, IEEE Trans. Signal Processing, 2025.

 2. 多層ニューラルネットワークによる単調リプシッツ連続勾配と画像復元問題への応用
H. Shimizu and M. Yukawa, arXiv:2510.21421.

 3. 不連続Shrinkage作用素から(AIアシスト型連続最適化戦略に利用可能な)MoL-Gradデノイザを生成する方法
M. Yukawa, IEEE Open Journal of Signal Processing, 2025.

 4. 二つの近接作用素の外分によって生成されるMoL-Gradデノイザとそれによる機能強化
K. Suzuki and M. Yukawa, IEEE Trans. Signal Processing (採録決定, 2編組の論文です)

もっと詳しく
 1. 学生・一般の方向け (link)
 2. 研究者向け:RAMP数理最適化シンポジウム 招待講演 (予稿集 2025.10.29公開)



2. ネットワーク上の最適化:分散型アルゴリズム


概要
ネットワーク上に散らばるセンサー(あるいはエージェント)が、それぞれ観測した「ローカルな」情報から学習した推定解(または、勾配などの情報)を近くに存在するセンサーのみと共有し、全体のセンサーで観測された情報に基づく「大域的な」最適化問題の解を求める問題は、分散型最適化問題と呼ばれます。本研究室では、凸最適化、不動点近似(特に、弱凸関数による正則化)に基づくアプローチを研究してきました。さらに、Fraunhofer研究所との国際共同研究により、合意形成行列が確率的にゆらぐ場合の収束解析にも成功しています。




応用分野
センサーネットワーク、マルチエージェントシステム、連合学習、 ドローンを用いたセンシング、他多数

研究プロジェクト
 1. OTAプロトコルに基づく分散型凸最適化アプローチ(OTA: Over-the-Airの略、分散型最適化アルゴリズムで行われる合意形成(一種の平均化操作)を物理的な通信路で実現する「エコな」手法)
[国際共著] N. Agrawal, R.L.G. Cavalcante, M. Yukawa, and S. Stanczak, IEEE Trans. Signal and Information Processing over Networks, 2024.

 2. 外れ値にロバストな分散型最適化アプローチ
M.H.V. Tillmann and M. Yukawa, IEEE Trans. Signal and Information Processing over Networks, 2024.

 3. スパース性を利用した分散型最適化アプローチ
[国際共著] K. Komuro, M. Yukawa, and R.L.G. Cavalcante, IEEE Trans. Signal and Information Processing over Networks, 2022.


3. 外れ値にロバストな信号復元法:Moreau包に基づく正則化関数の機能強化


概要
信号データ解析では、センサーの誤作動や入力ミスなど、様々な理由で全体の傾向から大きく外れたデータが混在することがよくあります。突発性のノイズもこれに該当します。このようなデータは外れ値(outlier)と呼ばれ、間違った解析結果を招く要因となります(下図参照)。面倒なことに、高次元データにおける外れ値を見つけることは一般に難しいことが知られており、外れ値の影響を受けずらい「ロバスト統計」の研究が長年、行われてきました。しかし、これまでに提案されてきた主な統計手法には、「外れ値に対するロバスト性」と「数学的な扱いやすさ(収束保証)」の間にトレードオフがありました。本研究では、「Moreau包に基づく正則化関数の機能強化」により、このトレードオフを解消し、既存のロバスト手法が劣化してしまうような大きな外れ値に対しても頑健なアプローチを提案しました。 詳細 (link)




応用分野
音声・音響、脳波信号解析、ガス濃度の予測(センサーネットワーク)、 データ解析、他多数

研究プロジェクト
 1. 外れ値に頑健なクラス識別器:ソフトマージンSVMとハードマージ ンSVMをつなぐロバスト分類手法
R. Kadowaki and M. Yukawa, ``LiMES-SVM: A robust classification approach bridging soft-margin and hard-margin SVMs,'' IEEE MLSP, London: UK, 2024.

 2. ネットワーク上のロバスト信号復元法:外れ値に頑健で、ガウス性雑音環境下でも安定な手法の提案
M. H. V. Tillmann and M. Yukawa, IEEE Trans. Signal and Information Processing over Networks, 2024.

 3. スパースモデリングのバイアス低減とロバスト推定のための一般的枠組みの研究:LiMESモデル
M. Yukawa, H. Kaneko, K. Suzuki, I. Yamada, IEEE Trans. Signal Processing, 2023.

 4. 外れ値に頑健で、ガウス性雑音環境下でも安定な信号復元法
K. Suzuki and M. Yukawa, IEEE Trans. Signal Processing, 2023.

 5. 同時スパース性を持つ信号のロバスト復元法
K. Suzuki and M. Yukawa, IEEE Trans. Signal Processing, 2021.


もっと詳しく
 1. 学生・一般の方向け (link)



4. 非線形関数のオンライン学習法:多カーネル適応フィルタ


概要
スマートデバイス(ウェアラブル端末)の普及などにより、環境変化に追従可能な適応信号処理技術への需要が高まっています。使用する場面が多様化していく中、従来の線形手法には限界が見えており、非線形手法へ関心が向いてきています。本研究室では、「不動点近似に基づく適応アルゴリズムの枠組み」と「再生核の理論」を融合した多カーネル適応フィルタを提唱してきました。この手法では、カーネル関数の線形和で非線形関数を近似します。下図は、ガウスカーネルを採用した場合を模式的に描いています。現在では、無線通信を始めとする諸問題への応用などに取り組んでいます。詳細 (link)



動画



English


応用分野
音響、無線通信、時系列予測、オンライン学習、他多数

深層学習に対するメリット
膨大なデータを必要としない点、計算量が比較的軽い点が大きなメリットです。

研究プロジェクト
 1. 無線通信におけるロバスト角度パワースペクトル推定法
[国際共著] N. Kaneko and M. Yukawa, R. L. G. Cavalcante, and L. Miretti, IEEE SPAWC, Lucca: Italy, 2024.

 2. 無線通信への応用:異種カーネルを用いたロバストオンライン他ユーザ検出法(線形カーネルとガウスカーネル)
[国際共著] D. A. Awan, R. L.G. Cavalcante, M. Yukawa, and S. Stanczak, IEEE Trans. Signal Processing, 2023.

 3. ガウスカーネルのモデルパラメータ(中心点とスケール幅)の適応学習アプローチ
M. Takizawa and M. Yukawa, IEEE Access, 2021.

 4. 多カーネル適応フィルタと時系列予測への応用:スケール幅の異なるガウスカーネルを利用(多カーネル適応フィルタの原著)
M. Yukawa, IEEE Trans. Signal Processing, 2012.

もっと詳しく
多カーネル適応フィルタ
 1. 一般・学部生向け (link)
 2. 研究者向け:日本音響学会誌, 連載講座 (全回分 [link])
 3. 研究者向け:電子情報通信学会誌 解説論文
無線通信システムへの応用
 1. 一般・学部生向け (link)
 2. 研究者向け:電子情報通信学会・短距離無線通信研究会, 招待講演, 2022.


メディア報道
Top Researchers(link)

受賞
日本学術振興会賞(link)
ドコモ・モバイルサイエンス賞(link)


5. 高性能適応アルゴリズム


概要
適応信号処理は、情報通信システムの基盤技術として、産業を根底から支えてきました。近年、スマートデバイス(ウェアラブル端末)の普及などにより、高速な追従性能が求められてきています。本研究室では、不動点近似に基づく集合論的アプローチにより、高速な収束特性と低計算コスト性、雑音へのロバスト性を同時に実現する適応アルゴリズムを開発しました。当成果は、国内外で高く評価されています。




応用分野
音響、無線通信、時系列予測、オンライン学習、他多数

研究プロジェクト
 1. 非集中型スパース性に基づく適応アルゴリズム
[国際共著] C. Wang, Y. Wei, and M. Yukawa, Signal Processing, 2024.

 2. 適応ビームフォーミングによる時間相関のある干渉除去
[国際共著] T. Kono, M. Yukawa, and T. Piotrowski, Signal Processing, 2021.

 3. 多領域における制約を考慮した適応アルゴリズムと無線通信への応用
[国際共著] M. Yukawa, Y. Sung, and G. Lee, IEEE Trans. Signal Processing, 2013.
M. Yukawa, K. Slavakis, and I. Yamada, IEICE Trans. Fundamentals, 2010.

 4. 計量を時間変化させた並列射影型適応アルゴリズムと音響システムへの応用
M. Yukawa, K. Slavakis, and I. Yamada, IEEE Trans. Audio, Speech and Language Processing, 2007.

もっと詳しく
 1. より一般の方:日本音響学会誌, 連載講座 (2022) (全回分 [link])
 2. 研究者向け:日本音響学会誌, 解説 (2015)

受賞
科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞(link)





  • 「信号処理と機械学習」に関するPV(IEEE Signal Processing Society提供)


  • 「信号処理とは何か」に関するPV(IEEE Signal Processing Society提供)


  • 信号処理の概要と数理的アプローチの意義
    ☆ 過去に海外の大学で行なった特別講義の講義資料(一部)はこちら
    過去の研究テーマ



    English